介護施設の相談員になる時に『相談員が何をする人なのか』を知っていることは絶対条件です。
相談員の仕事内容や役割、立ち位置がわからないまま、相談員の仕事をすると
- 間違ったことをしている
- やらなくてはいけないことをやっていない
こんなことから、事故やクレームに繋がる可能性もあります。
実際、あなたの施設の相談員に「相談員の仕事って何ですか?」と質問をした時に一言で返答が返ってくるでしょうか?
実は、相談員の仕事は、一言ではなかなか言い表せないくらい、業務の幅が広かったり、各施設ごとに立ち位置が違ったりという特徴があります。
そこで、この記事では、そんな相談員の仕事の中でも、介護施設の相談員に焦点を当てて仕事内容、施設内での立ち位置、他部署との関係性について解説していきます。
- これから相談員になる!なりたい!という人
- 最近相談員になった!という人
- 職場に相談員業務について教えてくれる人がいない人
- 厚労省や社会福祉法で定められている相談員の定義を理解する!
- 介護施設内での相談員の立ち回り、役割、仕事内容を理解する。
- 介護施設内での相談員とケアマネの違いを知ることで、相談員の仕事を理解する。
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厚労省の『相談員』の定義
そもそも、『生活相談員』とは、どんな人のことを指しているのか?
まずは厚労省がどんな人を『生活相談員』として指名しているのかを知っておきましょう!
実はGoogleなどで『厚生労働省 相談員』などと入れて検索をしても、明確な公式の答えが出てきません。
しかし、「こんな人を相談員にするように!」という内容は、かなり遠回しに書かれています。
じゃあ、実際にどんな人を生活相談員にするように書かれているかみていこう!
この項目は、覚えておかなくても相談員の仕事に直接関わるわけではないので、難しいことを考えず、雑学として読んでおく程度で大丈夫です!
【特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準】に書かれている内容
まずは『特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準』に、生活相談員について書かれているので確認していきます。
生活相談員は、当然、特別養護老人ホーム以外にも配置されていますが、今回は例として特別養護老人ホームで解説します。
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
第2条 2項
生活相談員は、社会福祉法第十九条第一項各号のいずれかに該当する者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。
引用:特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
これだと、結局、生活相談員が何なのかわからないよね?
そうだね!ここに書かれている『社会福祉法第十九条第一項各号』に何が書かれているのかを見ていこう!
社会福祉法第十九条第一項各号に書かれている生活相談員の条件
社会福祉法第十九条第一項各号には、生活相談員について書かれているわけではありませんでした。
正確に言うと、社会福祉主事を任用する基準について書かれています。
ここに書かれている条件と、さっきの項目の生活相談員の基準は一緒ってことなんだね!
社会福祉法第十九条第一項各号の内容を読んでみよう!
社会福祉法第十九条第一項各号
第十九条 社会福祉主事は、都道府県知事又は市町村長の補助機関である職員とし、年齢十八年以上の者であつて、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、かつ、次の各号のいずれかに該当するもののうちから任用しなければならない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)に基づく高等学校又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく専門学校において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
二 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者
三 社会福祉士
四 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
五 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの
2 前項第二号の養成機関及び講習会の指定に関し必要な事項は、政令で定める。
引用:社会福祉法
簡単に言うと
社会福祉主事には
18歳以上で社会福祉についてしっかり考えられる人!
それと次の1〜4のどれかの条件に当てはまる人を選ぶように!
- 決められた大学、高校、専門学校で決められた授業を受けて卒業した人!
- 都道府県で決められた講習会や養成機関での授業を受けた人
- 社会福祉士を持っている人
- 『社会福祉事業従事者試験』に合格した人
それと!!
これら1〜4の条件に当てはまる人『以上』の能力がある!と厚生労働省令で認められた人!
つまり!
『特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準』で言われている、生活相談員というのも、この条件に当てはまる人じゃないといけませんよ!っていうことを言っているんだね!
相談員の役割は?基本的な仕事内容
この項目では
- 各部署や家族、医療機関を繋ぐ役割
- 稼働率を維持する役割
- その他、こんな仕事をやる場面も!
こんな内容について解説していきます。
相談員の業務に就く前に、相談員がどんな役割を担っているのか。どんな仕事を施設から任されているのかを理解しておく必要があります。
相談員の役割、仕事を理解しないまま、相談員業務を始めると
- やることをやってい
- 他部署に任せないといけないことを勝手に相談員が判断してやってしまう
このようなことが起こり、取り返しがつかないようなことになる!そんな最悪の状況も考えられます。
相談員の仕事を「これからやる!」「最近始めた!」
という人は、この項目は必ずチェックしておいてね!
各部署や家族、医療機関を繋ぐ役割
介護施設における相談員は、利用者さんに関わる人達を繋ぎ、情報をスムーズに橋渡しする役割を担う必要があります。
もし、この相談員の橋渡しができないで、介護施設のそれぞれの部署、医療機関、福祉用具の業者などがお互いの動きを知らずに自由に動くとどうなるか考えてみてください。
リスク管理がしっかりできる方なら、仕事がスムーズにできないだけでなく、利用者さんが危険にさらされることも想像できるのではないでしょうか。
例えば、介護士が「最近、食べ物でむせるようになってる」という情報を持っていても、栄養士が知らないで、硬い食べ物を提供しちゃうなんてことも考えられるよね!
そうだね!
それに、家族がそれを知らなくて、入院になってから全て聞かされるなんてことがあったら「なんで教えてくれなかったんだろう」って、不信感に繋がることも考えられるよね。
そんなことにならないように、相談員がしっかりと、それぞれの部署や家族、関連機関との間を繋ぐ橋渡し役になる必要があるんだよ!
でも、各部署が、必要な部署に自分達で情報を伝えればいいだけじゃないの?
この考えは、ある意味理想かもしれませんが、『橋渡し役』がいないで、それぞれで情報を交換しあうと、同じ話を各部署に何度もしないといけなくなったり、家族に誰が連絡するのかわからなくなります。
つまり
1つの情報を必要な部署、家族などに的確に伝えていくのが相談員!
結果、利用者さんに的確な介護、看護ができる!
稼働率を維持する役割
介護施設の稼働率は、相談員に一任されることが多くあります。
相談員は、契約をしたり、各部署と関わるという仕事の性質から、外部の人に施設の魅力を伝えるのにはうってつけの立場にいます。
それもあって、稼働率を任され、営業マンみたいになることが多いよね?
中にはその営業活動にストレスを感じて、相談員を辞めてしまう人もいるんだよ!
これから相談員をやる!という方は、営業活動をどの程度しないといけないのかも、調査しておくといいかもしれません。
相談員の営業活動に関しては、電子書籍でさらに細かく書いたので、読書をする時間を作れたら読んでみてください。
>>【相談員必見!】介護施設の新人相談員がベテラン相談員を追い抜く本を発売しました!<<
その他、こんな仕事をやる場面も!
ここまで紹介してきた、相談員の業務の他にも、介護施設の相談員が任される仕事はたくさんあります。
ここでは、相談員が任されやすい仕事の一部を紹介していきます。
送迎業務
施設によってですが、病院や外出レクの際の送迎を行うことがよくあります。
この他にも、契約の為に利用者さんのお家へ行ったりすることもある為、相談員に運転免許は必須と言っても過言ではないでしょう。
行事の計画立案
行事は、介護士から出てくることも多くありますが、相談員から出すこともよくあります。
行事は、それぞれの施設の売りにもなるため、「これは面白い!」という行事を思いついたら、相談員も積極的に行事計画を出していきましょう!
請求業務
請求を相談員がやる施設もあります。
事務員が一括で行っている施設もあるのですが、利用者さんや家族に利用料を説明できるようにするには、相談員もある程度、請求業務ができるようになっておく必要があります。
相談員になって、請求業務を覚えるチャンスがあったら、断らずに覚えてしまうことをオススメします!
資料、書類の管理
介護施設の資料、書類の管理は多くの場合、相談員が中心になって行います。
「書類の管理」とだけ聞くと簡単に聞こえるかもしれませんが、書類の管理は確実に行えていないと、実地指導の時に施設全体が困ることになります。
前任者が資料、書類の管理が上手くできていない!そんなことがあったら、まずは書類整理の方法からしっかりと作り上げておいた方がいいでしょう。
他部署、家族と相談員の関係性
先ほどの項目で、相談員は各部署や家族との橋渡しの役割をする!ということを書きました。
この立場、少し間違えると「周囲より上の立場にいる!」と勘違いすることがあるので、注意が必要です。
この項目では
- 他部署と相談員は完全に同等
- 家族はお客さん。だけど協力してもらえる関係性が必要
この2点について書いていきます。
他部署と相談員は完全に同等
項目の冒頭でも書きましたが、橋渡しをする相談員は、他部署に指示を出す上の立場!と勘違いしやすいですが、完全に間違いです。
介護は介護士。看護は看護師。栄養管理は栄養士。相談員業務は相談員がやっているだけのこと。
各部署に各専門家がいるのは、介護施設の最大の強みです。
相談員は、各部署の専門性を活かして、利用者さんに1番的確な介護をしていけるように情報を橋渡ししていこうね!
家族はお客さん。だけど協力してもらえる関係性が必要
利用者さんの家族とは、何かあった時に協力してもらえる関係性を作っておく必要があります。
利用者さんの家族は、確かにお客さんではあるのですが、介護施設と家族が協力体制を築けないと、困ることが多いどころか、クレームも出やすくなります。
普段から家族とコミュニケーションをとっていれば
何か大きな変化があった時も
「あれだけやってても、身体レベルが下がるんだ」
と納得してくれかもしれません。
普段コミュニケーションも取れていないと
身体レベルが下がった時にだけ連絡をしていたりすると
「これまで、ちゃんと対応はしてくれていたんですか?」
と、不信感からスタートしてしまうことにもなりかねません。
この、家族とのコミュニケーションは、立場上、相談員がやるしかないから、利用者さんに良い介護をする為、施設を守るためにも、普段から気にして、家族とは協力してもらえる関係を作っておこうね!
介護施設での相談員とケアマネの違い
介護施設の相談員とケアマネの違いを理解することは、トラブル回避のために必要です。
この相談員とケアマネの違いについて、職場の関係性によっては「それはケアマネの仕事でしょ」「相談員にやらせて」というようなトラブルになることがあります。
このようなトラブルを回避するためにも、相談員とケアマネの差、特に相談員の仕事の幅の広さを理解しておく必要があります。
介護施設におけるケアマネの仕事
まず、ケアマネージャー(介護支援専門員)は、ケアのマネジメント業務、つまりケアプランを作るのがメインの仕事です。
作成したケアプランをもとに各部署が行動して、介護の方向性がぶれず、利用者さんの状態、状況改善に向けての計画立案をする必要があります。
入所していない、お家に住んでいる要介護者の担当ケアマネージャー(居宅ケアマネ)は、家族や事業所との連絡調整も主な仕事の1つです。
しかし、介護施設に関しては、相談員という職種が別でいるため、外部との連絡は相談員に一任している事業所も多くあります。
ケアマネが相談員業務をやる施設もたくさんある
「でも、私の職場はケアマネが家族連絡も各部署への連絡もやってるよ?」
こういう疑問を持っている方いませんか?
実は、ケアマネージャーの資格を持っているというだけで、施設での配置上は『相談員』として働いている人が多くいます。
これには理由があり、多くの地域でケアマネージャーが持つ『介護支援専門員』という資格は、相談員をやる際の要件に当てはまっています。逆に社会福祉士や社会福祉主事、介護支援専門員の資格を持っていても、ケアマネージャーの仕事をすることは許されていません。
つまり、介護施設の多くは『介護支援専門員』を持っている人を相談員、ケアマネージャーに配置することで、配置異動もしやすい!って考えることが多いんだよ。
そっか!社会福祉士を持っている人がたくさんいても、また介護支援専門員を雇わないといけないんだもんね!
だから、ケアマネージャーの資格を持ちながら、施設の契約とかしてる職員さんがいるんだね!
できるだけ、相談員はケアマネの仕事も網羅しておくべき!
もしあなたが『相談員』として介護施設に配置されるとしたら、ケアマネージャーの仕事もこなせる!というくらい把握しておいた方がいいでしょう。
当然のことですが、利用者さんの家族は色々な質問を各部署の担当者に直接するわけではありません。
ある程度答えられる内容は網羅しておかないと
「あの相談員、聞いても何にもわからない」
と、家族の不安をあおる結果になりかねません。
また、各部署への連絡調整をする時も、ケアマネの意図を理解できないまま情報を他部署に伝えるのは、伝言ゲームをやっているようなものです。
結果、ミスが起こるリスクが高すぎます。
ケアマネの仕事だけじゃなく、それぞれの部署がその利用者さんに対してどんなアプローチをしているのかを把握しておく必要があるね!
その中心のケアプランを作っているケアマネの仕事は、率先して理解しておこう!
介護施設の相談員の仕事内容 まとめ
この記事のまとめ
- 生活相談員の基準については『社会福祉法第十九条第一項各号』で定められている。
- 相談員は各部署、関連機関、家族の橋渡しをする仕事!
- その他に、稼働率の維持、送迎、請求などの業務も相談員が受け持つことが多い。
- 相談員は情報を伝える仕事だけど、指導、命令する訳ではない!他部署との関係性を履き違えないことが大切!
相談員の仕事について解説してきたけど、各職場での相談員の立ち回り方には大きな差があるんだ!
この記事の内容で、相談員の大まかな仕事と役割を理解したら、自分の職場の相談員がどこまで求められているかをチェックしておこうね!